一度は観てみたかった、
松本幸四郎のラ・マンチャ!

2時間半ほどの公演なのですが、途中に休憩なし。
でも、あっという間!
松本幸四郎は、ほとんど出ずっぱりで歌ってて、
とても遍歴を過ぎた方とは思えない、スタミナでした・・・
すーごくいい声。

ドン・キホーテを元にしたミュージカル、という程度しか知らなくて、
観てみたら、思ったより難しいテーマのお話でした。
再演に再演を重ねて公演回数も記録的だから、
もっとエンターテイメントな感じだと思っていたので予想外でしたが、
でも、松本幸四郎の熱演に魅了されちゃいましたよ・・・

+++++あらすじ++++++++
主人公は、『ドン・キホーテ』の作者・セルバンテス。
セルバンテスが宗教裁判にかけられるまで放り込まれた、留置場。
荒くれの囚人達に取り囲まれ、弁明としてセルバンテスは、
他の囚人たちを巻き込んで、『ドン・キホーテ』の話を演じ始める。
(『ドン・キホーテ』の物語は、劇中劇として進むのです)

『ドン・キホーテ』の主人公は、騎士道なんてとうにすたれた次代に生きる田舎の引退した貴族アロンソ・キハーナ老人。
彼は騎士道物語を読んで読んで読み明け暮れて、気が違ったのか、
「わしは騎士のドン・キホーテだ!世の中の悪を絶たねばならん!」と旅に出た・・・
+++++++++++++++

というわけで、
『ドン・キホーテ』の作者・セルバンテスは、
そのまま、『ドン・キホーテ』の主人公・ドン・キホーテことアロンソ・キハーナ、
というちょっと複雑な劇なのです。
で、セルバンテス=アロンソ・キハーナ=ドン・キホーテは、
みな、ラ・マンチャ地方に生きる男だ、というタイトルなのです。

とにかく、松本幸四郎が、すごくすごくいい声で、歌もうまいし、
ドン・キホーテの突拍子もなさも、
セルバンテスのおどけながらも知的な感じも、
アロンソ・キハーナの夢を見たいけど・・・という気持ちも、
すごくいい感じで演じておられました。
日本で、松本幸四郎の後に、これを演じる人が出てくることになったら、
ものすごいプレッシャーを背負うのは間違いないでしょう。

で、松たか子も、宿屋のあばずれ女アルドンサ(ドン・キホーテは「麗しの姫君・ドルシネア」と呼ぶ)も、
はまってました。
松たか子の喋り方とか声に、あばずれ女が合うんですよー。
他のドラマとかCDとかの歌や喋り方は、実はあんまり好きじゃないですが、
ここではピッタリ合っててよかったです。

難しい劇でしたが、
「松本幸四郎すごい!」のパワーで、きっとこれは再演されてるんだな、と思いました。
「オペラ座の怪人」はずっと見たかったのです!
今、このケン・ヒル版と、
これから映画版と、四季版がやるはずですが、
本場のイギリスの人が作った最初のやつを見てみたかった。

だけど、ケン・ヒル版はクラシカルなところが多くて、
本当のオペラを編曲したりしたナンバーが多く、
オペラを見たことがない私にはあんまり馴染めなかったです・・・。
単語も難しくて、字幕ばっかり見てしまってちょっとつらかった・・・。

舞台の上に、さらにパリのオペラ座の舞台をセットで作っていたので、見える面が少なくて、
2階席だったというのもありますが、かなり見づらかった。

・・・これから演る四季のも見てみたいです(--;

「異国の丘」

2001年11月1日 演劇
劇団四季の久しぶりの(って私は四季オリジナルを見たのは初めてだったのですがv)ミュージカル、
関東ではテレビでもよくCMやってる

『異国の丘』

見てきました!!

第二次世界大戦末期、日ソ不可侵条約を破って、ソ連が満州を押して数多くの日本人が捕虜として捕らえられた。
戦争が終わり、ソ連は「捕虜を日本へ送り返す」と言って東海岸に集めながら、
人々をシベリア開拓の強制労働者として、
太陽を背にして西へ拉致した・・・
その中に、九重(ここのえ)秀隆もいた。

九重秀隆は日中戦争の開戦期の首相九重菊麿の息子であった。
九重が政権についていた頃、彼はアメリカに政治学、国際関係学を学びに留学していた。
ちょうど盧溝橋事件の起きた頃だった。
恩師の先生に連れられてやってきたバー(?)で、彼はダンスのパートナーとなった女性に一目惚れする。
同じくそのバーのオーナーの招きでやってきた、
蒋介石の姪、宋 愛玲(アイリー)も、
あるゲームでダンスのパートナーとなった男性に惹かれる。
その翌日、イギリス領事館で二人は再会し、互いが敵国の人間だということを知り、許されない恋だと思い知る。
思い知ってなお、二人はその気持ちを捨てきれない。
まもなく日中戦争が始まり、二人はそれぞればらばらに、それぞれの祖国に帰国し、
祖国のために、彼らは日中の和平へ向けて努力するが・・・

シベリアのシーンとアメリカ、日中戦争中の中国のシーンが交互に出てきます。
暗い絶望的なシーンと、少しは明るい希望と情熱のシーン。
でも全般的に暗いです(^^;
戦争の話だからしょうがないんですけどねー
「異国の丘」って、本当にシベリア抑留から還ってきた人が作った曲で、
昔のNHKのど自慢大会とかでも歌われて、はやったのだそうです。
それに、九重秀隆も実在した貴公子で、実名は近衛文隆、実際に首相になった近衛文麿の息子。
これがノンフィクションだとすると、
本当になんだか、「重い」ストーリーでした・・・

途中で遺言が出てくるのですが、それが、すごく切々としていて、そこが一番沁みて、泣けました・・・
この遺言も含めて、あちこちに戦後を生き抜いていく人たちに向けたメッセージのようなものが散りばめられていて、
そのひとつひとつが重かった。

ミュージカルとしては、一つ一つのセリフが硬い口調だったというのが気になりました。
まぁ戦時中ということでわざとなのかも知れないけど、
ちょっとセリフらしく聞こえてしまうかも。
秀隆の声が気持ちのいいテナーでかっこよかった。

ともかくメッセージ性の強いミュージカルで、
楽しむというよりは重いものでした。

・・・だけど、同時に思ったのが、こういう重いものも、現代では簡単に「消費」されてしまうということ。
ただ過ぎ去るのではなくて、私のどこかに沈殿を残したいと思います。